笛吹レトロスペクティブ

日常の風景に埋没して見過ごされがちな年代物の建築や物を見つけて紹介していくコーナーです。それらが経てきた歴史や人と寄り添ってきた歳月が語る古き時代の新しい発見。笛吹リスペクトの企画スタートです。

File1ひだまり公園のベンチ

このベンチに座ってスカットを飲みたい

笛吹市御坂町二階という地区に、ご覧のようなベンチが置かれた公園があります。ベンチの背もたれには、「スカッと飲もう Meijiスカット」と、鮮やかな文字が書かれていました。郷愁を呼ぶ「スカット」のロゴデザインもさることながら、ベンチが置かれた公園もよくよく見ると手作り感あふれるものです。入口にはハンドメイドらしい看板を発見。ウッディな看板には「ひだまり公園」と書かれていて、ますます興味が湧いてきました!

かわいらしい文字で書かれた看板

背もたれの内側には「明治アイスクリーム」の文字

ひだまり公園とは

調査の結果、この公園は二階地区の住民が一致協力して作り上げた手作り公園ということが判明。もともとこの場所は隣接する報光寺の所有地なのですが、地区の老人会が梅を育てて販売し、活動費に充てていました。その後老人会がなくなると、草が生い繁りゴミが不法投棄される荒廃地となってしまいました。何とかしたいと立ち上がったのが、有志からなる「二階花園づくり実行委員会」です。平成12年2月から、重機などを持ち寄り大掛かりな工事を行い、その後住民全員参加で花壇を整備して球根や花苗を植えたそうです。公園の名前も募集し、「ひだまり公園」と決定。第1期~第2期の工事を経て、約一年後の平成13年4月に完成し、地域の憩いの場に生まれ変わりました。この手作り公園は数多くの表彰を受け、二階地区を一躍有名にしたそうです。

ベンチの来歴

そしてこのベンチ。何とかお金をかけないで公園を作りたかったので、廃品を貰い受けて様々な場所に活用したそうです。それら廃品の中にこのベンチもあったわけです。座面はすでに朽ちてボロボロだったため、新しい板を打ち付けてペンキを塗り、金属製の背もたれはそのまま使用。廃品再生・何でも工夫して活用する徹底したポリシーはお見事!

というわけで、このベンチは貰い受けた廃品のため、出所不明。ネットで調べてみると、「明治スカット」は1962年発売の果汁炭酸飲料で、1990年代まで販売されていたようです。このロゴは発売当時のデザインなので、おそらく1970年以前のものではないかと思います。当時、このようなベンチを銭湯や野球場などでよく見たという話もあるので、もしかしたら銭湯などで使われていたのかもしれませんね。湯あがりの老若男女がこのベンチに座って、明治スカットをスカッと飲んでいる図が浮かびます。数十年の時を経て、何の縁か二階ひだまり公園に置かれ、やはり老若男女が憩う場所で余生(?)を過ごすベンチ。色んな思い出をいっぱい抱いて、訪れる人を待っています。

公園ボランティア

公園について話をお聞きした細田豊さんは、花園づくり実行委員会を立ち上げた方で、現在もボランティアとして公園の手入れを行っています。作る以上、公園は継続しなければいけないと思い、当初から長く継続する方法を考えたそうです。結果、二階地区の管理公園として維持費を負担してもらうことができました。地域住民の協力に支えられ、10年を経た現在も花が絶えることのない憩いの場として愛されています。

公園内には現在も10本の梅の木が残されていますが、細田さんは毎年この実を収穫して「梅干のハチミツ漬け」を作り、地区全戸(70戸)へ配布しているそうです。平成13年から一年も欠かすことなく続けている作業だそうで、みんなに喜んでもらえることが何よりも嬉しく励みになるとの事。殺伐とした風潮がまかり通る昨今ですが、この二階地区には、まさに「ひだまりのような暖かさ」が公園を中心に満ちていました。(取材:ちゃめ/2011.11)

青々とした緑は菜の花。春にむかって生育中

元気でるでる、ひだまり公園の梅「てっうまいじゃん」

ひだまりのような暖かさが地域を明るく包んでいます(公園に咲く百日草)


より大きな地図で 笛吹レトロスペクティブ を表示

懐かしい年代物求む!

身の回りに埋没している物や見慣れすぎて存在すら忘れてしまった古い建築物、楽しく懐かしい思い出の品や記憶の深海に眠る風景など、エピソードと共にお寄せください。速攻で取材に参ります!

【File2】 金地蔵と伝説

 

ページトップへ

〒406-0834 山梨県笛吹市八代町岡513-5 Tel.055-287-8851 Fax.055-287-8852
Copyright 2009-2012 Fuefuki-syunkan.net. All Rights Reserved.