果樹畑のアイドル！SSのひみつ

美しい果樹畑が広がる笛吹市の景観。のどかな農道を車で走っていると、突然前方に現れる不思議な形の赤いマシン。サンダーバードにでも出てきそうなSF的なデザインに「あれは何だろう？」と好奇心をかきたてられた人も多いはず。私も初めて見た時は、「なんだかヘンテコなものに遭遇してしまった！」と心が躍ったのを覚えています。平和な農村風景の中で、その謎のマシンはあまりにも目立っています。そしてなんとなくおしゃれでかわいい。自分の車の前を時速20キロぐらいでのんびり走っているのを見ると、追い越したいような追い越したくないような、楽しい気持ちになってしまいます。この赤いマシンの正体を探ってみると、笛吹の果樹栽培を支える農業機械だとわかりました。今回はこの魅惑のマシンのひみつを探ってみます。

【謎の赤いマシンの正体】

この赤いマシンの正体は、果樹園で薬剤散布に使われる農業用機械です。複数のノズルで薬液を噴霧して、後方の大きな送風機で拡散させます。果樹の間を自在に移動しながら薬剤を散布できるので、とても便利です。その名もスピードスプレーヤー。頭文字を取って、SS(エスエス)と呼ばれています。果樹のまち笛吹ではとてもポピュラーな農機具で、果樹農家さんでは、ほぼ一家に一台を所有しています。

【SSの５つの謎】

「SSについてもっと知りたい！」と思っているあなたのために、ちょっとマニアックな５つの謎を探ってみました。

謎１「免許は要るの？」

普通免許が必要です。SSは小型特殊自動車なので車検はありません。

謎２「最高速度は？」

法定最高速度は時速35キロメートルです。実際に出せるのは時速20キロメートルぐらいだそうです。

謎３「価格はどれぐらい？」

SSには様々な仕様があって、価格帯にも幅があります。安いもので100万円台後半から。キャビンタイプのものだと800万円を超えます。笛吹市で最も乗られているのは、200万～300万のタイプだそうです。普通自動車なら高級車が買える値段ですね。でも、耐用年数が長くて、諸経費があまりかからないそうです。

謎４「どんな種類があるの？」

様々な仕様があります。エンジンの馬力やタンクの容量などによって各グレードがあります。その他、オフロードに強い四輪操舵システムや、傾斜によって散布角度を調整できる機能、住宅や隣接畑に飛散しないよう片側の送風を遮断する機能をもつものなどがあります。オープンタイプに対し、キャビンタイプは運転者に薬剤がかからないので、合羽やゴーグルなどの防護装備をしなくてよいメリットがあります。もちろん冷暖房も完備されています。

謎５「作業の効率は？」

SSでの薬剤散布作業は10アールの畑で約20分ほどです。手散布の場合だと10アールの畑で約1時間かかるそうです。

動画「はたらくSS」

農家さんのご協力のもと、実際にSSが薬剤散布をしている様子を撮影してきました。（出演：となりの石倉さん）

【販売店に行ってみた！】

この記事で、SSについていろいろと教えていただいたのは御坂町の双葉商事株式会社さんです。

双葉商事さんは農業機械の販売・修理をしている会社です。農家さんの声を聞いて、アイデアマンの社長が開発したオリジナルの機械も販売しています。かつて双葉商事が開発した機能が、今では業界のスタンダードになっている例もあるんですよ。SSの他にもモアー（草刈り機）やリフトなど、農業機械全般を扱っています。道なき道を開拓するように、次々と農業機械を開発・改良して来た企業姿勢には、とても熱いものを感じます。

みなさん、SSの魅力をおわかりいただけましたか？真っ赤なSSに、おじいちゃんやおばあちゃんがちょこんと乗って、コトコト農道を走っているの姿は、かわいらしくて心が和みます。笛吹市に来た時は、是非、SSを探してみてくださいね。（取材：さっさ／2012.3）