特集:やまなしヌーボーで乾杯!

ワイン作り探訪 その1

ブドウの破砕・圧搾~発酵

取材:2009年9月25日

ベルトコンベヤーに乗せられて破砕機に投入される甲州ブドウ

マルスワイン

この日、訪れたのは笛吹市石和町にあるマルスワインさん。醸造場の前には、収穫されたばかりの甲州ブドウがすでに用意され、仕込みの準備は万端。朝の光を浴びて艶やかに輝くブドウたちは、美味なるワインへと生まれ変わる、その旅立ちの瞬間を静かに待っているかのようです。午前9時半、仕込み作業がスタート。ブドウの実ひと粒ひと粒のワインへの旅が始まりました。

醸造場と甲州ぶどう

搾り出された果汁

作業員が10kg入りのコンテナからテンポよくブドウを放り込むように破砕機のベルトコンベヤーに載せると、ブドウは高さ2m程の所にある投入口へと運ばれ、機械内へ落とされます。破砕機の中で房から茎が取り除かれ、同時に軽くつぶされたあとブドウの実は直径10cmほどの太いホースを通って圧搾機へ。タンクローリーのようにゆっくりと回るドラムの中は、風船のようなゴム状の袋が膨らむことによって圧力がかかり、ブドウの実が押しつぶされる仕組みになっています。果汁が搾り出されると、辺りは甘酸っぱい香りにあふれ、「ブドウの香りはこんなにも甘くていい香りだったのか」と、あらためて感じるほどでした。この圧搾方法はブドウの実をソフトにやさしく搾ることができるので、キメの細かい上質な果汁を搾汁することができるのだといいます。言い換えるとそれは、ブドウの実にできるだけショックやストレスを与えないことが、美味しいワインを作る上で欠かせない条件なのです。ただ単に実を押しつぶして搾るだけかと思っていた圧搾の段階で、早くもワイン作りの奥深さを見せられたような気がしました。

続いて、抽出された果汁はステンレス製の円筒形のタンクに送り込まれ、発酵の工程へと進みます。通常、薄緑色あるいは薄紫色の皮の色の淡いブドウを用いて作るのが白ワインですから、今日仕込んでいる甲州ブドウは、「白」ということになります。白ワインの発酵工程では、皮とタネを取り除いた果汁に酵母を加えて発酵させます。一方、赤ワインでは、ベリーAのように皮が黒または濃赤色系のブドウに酵母を加えて皮やタネごと発酵させて作ります。この発酵工程でタネからタンニンが溶け出して、赤ワイン特有の渋みのある重厚な味わいが醸し出されます。その逆に、白ワインは皮やタネの渋みがない分、赤ワインに比べて爽快で清涼な味わいに仕上がるのです。

発酵用タンク

ところで、「よいワインは、よいブドウから」という言葉があるように、ワインは新鮮なブドウ果汁を原料とするだけに、ワインはその年の気象条件などに大きく影響を受けやすいものです。そこで、今年のブドウの出来具合いについて工場の田沢課長さんにお聞きすると、「7月は日照不足で状態が心配されましたが、8月以降の好天と昼夜の気温差によって良い出来になっています。甲州は甘味、酸味のメリハリがしっかりしていて香りも良く、またベリーAはひじょうに色が濃くしっかりとした葡萄となっていて、どちらも美味しいワインが期待できそうです」と、仕上がりが楽しみなコメントをいただきました。

今日は仕込みの第一工程となるブドウの破砕と圧搾が行われ、抽出した果汁を発酵用のタンクに送り込むまでの作業が進められました。その量およそ14トン。コンテナにして1400箱分の甲州ブドウを一日で仕込みました。ブドウはしばらくの間、タンクの中で「発酵」の時を過ごします。

ヌーボーワインが出来上がるのは、およそ1ヶ月後。11月3日の「やまなしヌーボー」解禁日に合わせて出荷される予定とのことです。

ブドウたちが歩むワインへの道は、まだまだ続きます…。 (取材:しんたま)

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