2009 笛吹の夏祭り 灯篭流しレポート

灯篭流し

8月19日、午後七時半を回りました。笛吹川の河原を夕闇が包み始めています。藍色の空にお祭の提灯が浮かび上がってきました。

川原に設えられた祭壇の前では、お坊さんたちの読経が始まり、あたりは厳かな空気に包まれています。祭壇横には和紙で作られた灯篭が並んでいます。その一つ一つにお家の名前が手書きされていました。

いよいよ闇が濃くなってきて、川原の夜が始まりました。人々が抱え持つ灯篭の中に、明かりが灯されていきます。ふと、笛吹川を振り返ってみると川面は黒く静かな流れです。鵜飼の衣装の少年7名が、岸から川の中程まで一列に並ぶように静かに入って行きました。

灯篭を持った人たちが川縁へ降りて行きます。初老の女性が、一番岸に近い鵜飼の少年に、一礼して灯篭を託しました。「お預かりします。」少年は静かな微笑を浮かべて、丁寧にそう答えました。和紙で作られた灯篭ですが、鵜飼の少年たちは皆その重さを心に感じているようで、優しく丁寧に手渡して行きます。川の中程に立つ少年の元まで運ばれた時、その明かりは黒い川面にそうっと放たれました。

笛吹川のゆったりとした水面を、灯篭が静かに流れて行きます。灯された蝋燭の小さな炎が揺らめいて、水面のさざなみを照らしています。

岸辺の人たちは、それぞれの想いを込めて合掌し、少年に灯篭を託します。少年たちはそれを大切にリレーして、一つずつ川に流していきました。たくさんの明かりが川を進んで行きます。ずっと下流で灯篭を回収する役目の人たちがいるはずですが、闇に溶けてしまって私たちからは見えません。遠く連なる明かりの列を、皆静かに見送っています。それは幻想的で、切ない風景でした。その時間だけ、今は亡き人々と岸辺の私たちを笛吹川が繋いでくれているかのようでした。

最後の灯篭が流れて行きました。岸辺にいた人全員で、下流に向かって手を合わせました。目を開けたとき、小さな風が髪を撫ぜて行きました。線香の香りの混じったそれは、夏の終わりを告げているようでした。 (取材:さっさ)

 

 

 

 

 

 

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