「野生きのこ鑑定会」に行ってきました!

金川の森の「野生きのこ鑑定会」

10月10日。金川の森は気持ちの良い青空。3連休初日ともあって、公園内は親子連れで賑わっていました。鑑定会は午後1時から。早速昨日採ったキノコを持って管理事務所へ向かいます。

ホールいっぱいに机と椅子が並べられていましたが、既に満席。キノコの入った箱を持参されている方も何名かいました。チラッと横目で見るとすごく沢山入ってそう…。上級者かしら?たった一株しか入っていない自分の袋の情けなさに、ちょっと気後れしてきました。…が、いやいや、千里の道も一歩から。誰だって最初は初心者なのだと思いなおすことに。

金川の森のスタッフの方

金川の森のスタッフの方

楽しみに待つ参加者の皆さん

楽しみに待つ参加者の皆さん

講師の柴田尚先生

講師の柴田尚先生

時間になり、今回の講師の先生が紹介されました。「キノコ狩りに行くぞ!」と決めてからこの1週間、毎日鞄に入れ歩き、私の愛読書となってしまった『山梨のきのこ』(山梨日日新聞社)の著者、柴田尚先生です。柴田先生は山梨県森林総合研究所で森林研究部長をなさっています。『山梨のきのこ』の文面からはユーモア溢れるお人柄が伝わってきて、いつのまにか、実際にお会いできるのがとても楽しみになっていました。もしかすると、今日ここに来た人の中にも、著書を読んで先生にお会いしたくて参加した人が、少なからずいるのではないかと思います。そんな温かみのある魅力的な人物です。

例年ならば、早速キノコ鑑定に取り掛からないと、とても3時間では終わらないのだそうです。しかし、今年のこの不作。どの会場でも、鑑定希望のキノコが集まらず、時間が余ってしまう…ということに。そこで参加者にとっては、とても幸運なことに、キノコに関する講義をしてもらえることになりました。ここで、皆様のキノコ狩りのお役に立つように、講義の内容をかいつまんでお伝えします。

まず、日本のキノコの種類はおよそ5000種といわれています。そのうち名前の付いているものは半分だそうです。つまり、二つに一つは名前がついていないキノコなのです。そして、一般的によく使われるタイプの図鑑に載っているのが約1000種、全体の2割です。日本の8割のキノコは持っている図鑑に載っていないというわけです。へぇ、そうなんですね~。

また、食べられる食べられないで分けると、食べられるキノコは約300種。毒キノコは約280種。残りの4000種以上が、苦かったり、辛かったり、硬かったり、マッチ棒みたいに細かったりと、食に値しないものだそうです。ただし、そういったものの中からも近年、毒キノコが見つかっているので、知らないキノコを自分で判断して食べるのは絶対にやめてくださいとのことです。よく言われているキノコの見分け方で、「派手じゃないキノコは食べられる」とか、「虫が食べていれば食べられる」とか「縦に裂ければ食べられる」とか「ナスと煮れば毒が消える」とかありますが、それらは全て迷信なので、信じてはいけません。知らないキノコは勝手に食べない。これが原則です。

さて、私達の住む山梨県には、5000種の中の6割、約3000種のキノコがあると言われています。県の面積のわりに、キノコの種類がとても多いと言えます。ちなみに、毒キノコは280種ほとんど全部あるそうです。そんな山梨県は全国のキノコフリークに人気のスポット。特に関東周辺の人たちがキノコ狩りに訪れます。この季節、富士山麓に駐車しているナンバーの15%が県内ナンバー、85%が県外ナンバーなんだそうです。

参加者の尊敬を一身に集める柴田先生

参加者の尊敬を一身に集める柴田先生

いつかこんなの採ってみたい…

いつかこんなの採ってみたい…

山梨のキノコ中毒の約6割が、次の3種のキノコです。クサウラベニタケ、カキシメジ、ツキヨタケです。どれも、似たような美味しいキノコがあるので、事故が起こります。この3種類の存在を頭に入れておくだけでも、かなりの危険を避けられるとのことです。これは役立つ情報ですね。
そして、参加者みんなが知りたいこと、キノコはどんな所に生えるのか?

キノコの出やすい山は、生えている木の種類でわかります。杉や檜の森にはキノコの種類は少ないそうです。松ボックリやドングリが落ちている山はキノコのの種類が多いんですって。そして意外にも、藪が生い茂っているジメジメしたような場所にはキノコは少ないんだそうです。キノコは風通しの良い場所に生えるそうです。柴田先生曰く『山登りをしていて、お弁当を食べたくなるような気持ちのいい場所』がキノコも好きなんだそうです。お弁当を広げたら、そこにマツタケが!…なんてこともあるかもしれないんですね。

それにしても今年は野生のキノコが少なかったようです。道沿いのキノコ屋さんにも例年の三分の一から四分の一しか並んでいません。代わりに桃や葡萄を並べていたりしたようです。原因は、夏の日照不足と9月の少雨だそうです。キノコの菌が伸びる夏の時期に、十分な日照を得られず、地中の温度が上がりませんでした。さらに、お彼岸前の秋雨が降らず、キノコの芽ができる条件が揃わなかったとのことです。夏にしっかり暑くなって、9月に雨が多い、そんな年はキノコが多い年になります。それを知っていれば、7月の梅雨明け以降の天候の状態を見て、予測することができるようになるそうです。

さて、こんな分かりやすくて役立つ情報を教えていただいた後は、いよいよキノコの鑑定です。参加者が持参したキノコを柴田先生が鑑定してくださいます。その日の午前中に採ってきた、箱いっぱいのキノコを出すご夫婦もいらっしゃいました。キノコ初心者の私には、見たこともない色と形。なんだかワクワクしてきました。先生が白い紙にキノコの名前と(食)、(不食)、(?)、(苦い)、(まずい)などを書きこまれ、その上にキノコを乗せていきます。珍しいキノコが出ると参加者から「おぉ~!」なんてどよめきも起きました。自身の採ってきたキノコでなくとも、皆さん興味津々に鑑定の行方を見守っています。柴田先生の説明を、一言一句聞き漏らすまいというその熱心さ、本当にキノコがお好きなんだな~って伝わってきました。かく言う私も、いつのまにか引き込まれてしまって、「あんなのどこに生えてたの~?」とか、「わぁ~、かわいいキノコ!」とかすっかり夢中になってしまいました。

次々とりっぱなキノコが並べられていくのをみていると、楽しい反面、自分のキノコを出すのがちょっぴり恥ずかしくなってきました。金川の森のスタッフの方が親切な口調で「他には持って来られた方ありませんか?」と言ってくださらなければ、最後まで出せなかったかもしれません。

一つ一つ丁寧に鑑定…

一つ一つ丁寧に鑑定…

集まったキノコたち

集まったキノコたち

私の出した小さな一株をご覧になって、柴田先生は紙に「クリタケ(食)」と書かれました。あ、やっぱりクリタケなんだ。良かった、これで安心して食べられます。チャナメツムタケではなく、図鑑名のクリタケだそうです。「少し干からびているみたいに見えますが、まだ食べられますか?」と質問すると、先生は「そのくらいなら、ちょうど食べ頃ですよ。汁とか、炒め物とか、キノコごはんでも何でも合いますから。もうちょっとカサが開くとキノコごはんが真っ黒になっちゃうけど。」と教えてくださいました。私が初めて採ったキノコ、クリタケだったんですね。食べられるキノコ、しかも美味しいそうです。いい大人なんですが、やっぱり嬉しくなりました。

鑑定が終わると、柴田先生が「でも、だんだん出てきましたね。この所毎日のように鑑定会をしてますが、10月の上旬が一番底で、徐々に増えてきました。」と言われました。この後いつ頃までキノコ狩りが楽しめますかとお尋ねすると、11月14日までとのご回答が…。どうしてそんなに詳細な日付が?と不思議に思っていると、「11月15日から狩猟が解禁になるからです。それ以降は危険なので山には入らない方がいいですね。」とのことでした。なるほど…。

今日参加された多くの人々を熱くさせるキノコ。県外からも採りに出かけて来る人が大勢いるキノコ。柴田先生にキノコは地域の観光資源になりえますか?とお尋ねしました。「野生のキノコに、山菜や栽培キノコを組み合わせれば、人を寄せることができます。例えば、4月の中頃のお花見の時期にヒラタケやナメコの植菌体験をしてもらって、秋になったら収穫に再びきてもらう。近くの山でキノコ狩りをして、一泊し、みんなでキノコ鍋をして食べるのはどうですか。」とご回答くださいました。ええ、確かにそんなプランならば、ワクワクして山梨に行きたくなりますね。キノコ狩りの楽しさは、今回体験してみてよく分かりました。多くの人が、一度行くとその後嵌ってしまうのも肯けます。キノコツアーはリピーターも期待できるかもしれません。

最後に、キノコの多い山にするにはどうすれば良いかお尋ねしました。里山ならば、下草を刈ったり、余計な枝を掃ったり、落ち葉を掃いたり、昔からの管理方法に戻してやれば実りの多い山となるそうです。野生のキノコはどこにでもあるわけではありません。森林資源のある地域だけです。そして、笛吹市にも多くの山林があります。キノコはまぎれもなく笛吹の魅力の一つです。その天然の宝物、大事に大事にしていきたいですね。 (取材:さっさ)

山の恵み。おいしく頂きました

山の恵み。おいしく頂きました

おまけ

今回の体験レポートで登場したクリタケを、自宅でキノコごはんにしてみました。ちょうど同じ日にスタッフのちゃめ氏に頂いた野生のナメコ(新潟産)でおろし和えとナメコのお味噌汁も作ってみました。クリタケもナメコも、歯ざわりが最高!そして香り!山のキノコは美味しいんだなーって実感しました。キノコ狩り、絶対また行きます!ごちそうさまでした。

キノコ狩りレポート

 

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