特集:やまなしヌーボーで乾杯!

石蔵ワイン仕込み体験レポート

みなさんご存知ですか?笛吹市に日本最古のヨーロッパ型横蔵式地下発酵槽があることを。なんと国の有形文化財の指定も受けているんです。そんなすごい発酵槽で年に一度のワインの仕込が行われると聞いて、早速取材させていただきました!

醸造作業の安全とワインの良い品質を願って祈祷式

お邪魔したのは笛吹市にある老舗ワイナリー『ルミエール』さん。世界的なコンクールで数々の受賞暦をもつ名門ワイナリーです。勝沼にほど近い、ブドウ畑の連なる丘の中腹にありました。

午前9時半、工場内に設えられた祭壇に神主さんが現れ、醸造作業の安全とワインの良い品質を願って祈祷が行われました。木田社長をはじめ、ワイナリーのスタッフの方々が玉ぐしを奉納します。厳かな雰囲気の中、祈祷式はつつがなく進められました。

工場の一角には屋根まで届きそうなくらい、ブドウのコンテナが積まれています。本日石蔵に仕込まれるブドウはマスカットベリーA。約10トンです。これだけの量を本日中に仕込んでしまうとのこと。すごい…。

仕込まれるブドウのコンテナと模型を使って石蔵の仕組みを説明

仕込み作業の前にスタッフの方々がワイン造りに関する説明や、本日の作業の注意点を話してくださいました。特に模型を使って石蔵の仕組みを説明してくださったので、とってもわかりやすかったです。

ブドウの破砕作業

さて、いよいよブドウの破砕作業です。破砕機のスイッチが入りました。まず、スタッフの方がお手本を見せてくれます。破砕機の上に立ち、コンテナのブドウを次々と投入していきます。その速いこと速いこと…。動作が素早すぎて写真が撮れないくらい。なんとなく簡単そうに見えるけど…。いえいえ、体験者の女性に代わってみると、投入口に上手にコンテナを空けるのは、なかなか難しい作業のようでした。さすが、プロには敵いませんね。本日の体験者は20名弱。ヘルメットを被って投入作業を行いました。ちょっと大変な作業ですが、みなさん真剣な表情で臨んでいます。みなさんが一生懸命仕込んだワイン、美味しくなりそうです。

投入されたブドウは機械で軽くつぶされて、果汁とともにダクトへ流し込まれます。このとき、破砕機の片側ではブドウの軸が取り外されてまとめられますが、実はこれも後から石蔵に一緒に仕込まれます。それが昔からの製法だそうです。きっとワインの複雑な味や香りに一役買っているんでしょうね。長いダクトは石蔵まで続いています。今や文化財でもある石蔵を上から覗いてみると、きっちりと積み上げられた花崗岩の石壁がとってもクラシック雰囲気。それもそのはず、今から100年以上も前に造られたんですものね。100年も前からここでワインが造られていたなんて…。そして今も当時と同じ製法でワインを造っているなんて…。しかも現在、石の発酵槽を使用しているのは、日本はもちろん、世界でもここだけなんだそうです。なんだかとても感慨深くなりました。

石蔵の中にブドウが流し込まれ

体験者のみなさんの頑張りで、破砕作業がどんどん進んでいくにつれ、石蔵の中にブドウが流し込まれていきます。石の壁にブドウが満たされて行く様は、ちょっと古めかしい感じで絵になります。花崗岩による天然の冷却効果がある為、この石蔵では温度コントロールをしません。この地で採れた花崗岩で造られた石蔵。自然の仕組みを利用した素晴らしい知恵の結晶です。

ブドウの生絞り

体験作業の最中、工場の一角では木製の機械を使って、ブドウの生絞りが行われました。アンティークな絞り機で若いスタッフが生ジュースを作ってくれました。絞りたてのブドウジュースは想像をはるかに超えて甘~い!糖度計で測ってみたら、19度もありました。今年のベリーAは糖度が高いそうです。これなら、きっといいワインになりますね。

さて、破砕体験を終えた体験者たちは、地下のワインセラーを見学しました。ひんやりとした暗いセラーに入ると、なんだか落ち着くのが不思議…。以前はコンクリート製の発酵槽だったという壁は、ほんのりとワイン色に染まっています。その前に整然と並んだ樽の中で、様々なワインたちが時を待っているのでした。

ワインセラーを出ると一転、近代的な発酵槽の並ぶ醸造棟へ。そこでスタッフの小山田さんからワイン造りに関する説明をしていただきました。実際に発酵途中のブドウも見せて頂いて、とても貴重でした。その後、美しい自社農園を通ってブドウの栽培に関する説明を伺いました。ブドウ作りって天候に左右されて、とっても大変なんですね。でも、今年は数年来の糖度の高さだそうです。よかった。

左上:ワインセラー 右上:発酵途中のブドウ 左下:自社農園 右下:敷地内にあるレストラン『ラ・カシータ』での食事とワイン

石蔵に満たされたブドウのジュース

ブドウ畑を抜けて敷地内にあるレストラン『ラ・カシータ』へ。テラスもあるオープンなつくりで、ブドウ畑を望みながら食事をいただけます。美人シェフが採ってきたばかりのブドウの蔓でテーブルをコーディネートしてくれました。素材を活かしたサンドイッチの美味しさには感激。そして、その日発売されたばかりの巨峰の新酒と、ちょうど一年前に仕込まれた石蔵和飲(ワイン)を木田社長自らが注いでくれました。巨峰のワインはきれいなピンク色でとってもキュートな味。女性受けしそうです。そして注目の石蔵和飲は力強い味わい。熟成した樽の香りもしっかりと、存在感のある飲み応えです。味わいの違う2種のワインと美味しい食事でとっても幸せな気分になりました。

食事後、戻ってみると石蔵いっぱいにブドウのジュースが満たされていました。石蔵製法では、熟成の途中で攪拌したりしないそうです。それ故どんなワインになるかは、出来上がってみないとわからないとのこと。だからこそ、来年が楽しみでもありますよね。やはりワイン造りはとってもロマンチックなのだと思いました。

今回、ルミエールさんにお邪魔して感じたのは、スタッフの方々のワインに対する情熱の深さでした。とっても紳士的な木田社長のお話は、ワインに対する愛情をひしと感じます。粋な語り口の岩間工場長やソフトな印象の小山田さんも、ブドウやワインに関するお話をされている時、とてもキラキラされていました。スタッフの方全員が、ご自身のお仕事に誇りを持っていらっしゃることが伝わってきます。「良いワインを造るには、基本を守ることが一番大切。」という小山田さんの言葉に、ルミエールワイナリーの格の高さを感じました。今回は本当に貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。
(取材:さっさ)

 

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